【専門家が解説】土地の相続税の特例を使った節税方法

こんにちは。
中山不動産株式会社です。

不動産を所有している資産家にとって、自分が亡くなったときに相続税のことで遺族に迷惑を掛けたくないという思いは共通するものだと思います。
とくに、繁華街や高級住宅地にある土地をお持ちの方は相続税について悩んでいる方も多いことでしょう。

今回は、土地に焦点を当てて相続税の評価方法について解説します。
相続税の節税方法についても併せて紹介しますので、今後、相続税について税理士に相談する際の参考になればと思います。

相続税評価額とは

相続税評価額とは、相続税を算出する際の財産評価方法に従って算出された財産の価額をあらわしたものです。
相続税の計算は、まず正味の遺産総額を算出することからスタートします。

プラスの財産(現預金、不動産、事業用資産、車両、貴金属、有価証券、自社株など)からマイナスの財産(借入金債務、公租公課の未払金)などを引いて遺産総額を確定させます。
その際、各財産について評価額を決定する必要があります。
評価額は「時価」によることが原則ですが、土地建物などの不動産や未上場株、自社株などは時価の算出が困難です。
そのために特別な評価方法が定められています。

土地の評価額が相続税に与えるインパクト

評価方法の説明に移る前に、土地の相続税評価額が実際に支払う相続税額にどれほどのインパクトがあるのかについて確認していきましょう。
日本は国際的な比較においても、土地建物の相続税評価額が高いことで知られています。
国税庁の発表によると、平成30年の相続財産の構成比は以下のようになっています。

  • 土地 29.7%
  • 家屋 6.7%
  • 有価証券 16.5%
  • 現預金等 33.5%
  • その他 13.6%

上記のとおり、土地・家屋を合計して全体の36.4%もあります。
10年前の平成21年度では52.8%と半分を超える額が土地・家屋だったのです。
現在は地価の下落や土地の売却が進んだせいか割合は少なくなっていますが、それでも不動産の割合が相続財産の中で最も大きいのです。
不動産、特に土地の評価額をどのように考えるかということは、相続税対策に大きな影響を与えるのです。

土地の相続税評価額の算出方法

では、土地の相続税評価額はどのように算出するのでしょうか。
まずは、対象土地の地積を調べる必要があります。
これは、毎年市役所等から送られてくる、固定資産税の納税通知書や土地登記簿謄本を見れば確認できます。
この地積を基に、次のような方法で相続税評価額を算出します。

路線価方式

「路線価方式」とは、土地が接道している前面道路に路線価が設定されている場合に、路線価に地積を掛けた評価額に土地の形状に応じた補正を加えることにより評価する方法です。
「路線価」とは、毎年1月1日を基準日として7月1日に国税庁から発表される1㎡当たりの土地の価格です。
土地が面している道路に沿って価格が定められているために「路線価」といわれています。
自分の土地の路線価は国税庁ホームページで確認することが可能です。

路線価表を見てみると、道路上に数字とアルファベットが記載されていると思います。
その数字部分が路線価で、千円単位で記載されています。
「250」と記載されていれば、1㎡当たり250千円であることを意味しています。
これに地積を掛けて評価額を算出します。路線価が250千円、地積が100㎡の場合の評価額は25,000千円ということになります。
これに、奥行価格補正率、不整形地補正率などによって評価額を修正した値が原則的な土地の相続税評価額です。
細長い土地や不整形地は、整形地に比べて土地の利用方法が制限されたりすることから、路線価から算出した評価額から若干引く低めになるように補正されます。
詳細な補正率については国税庁ホームページで確認することが可能です。

倍率方式

路線価表をみると、中には道路に路線価が付されていない土地もあります。
その場合には「倍率方式」によって評価額を算出します。
「倍率方式」とは、国税庁が発表する倍率表に基づいて、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて算出する方式です。
先ほどの路線価のホームページ内に「評価倍率表」がありますので、あわせてご覧ください。

相続税対策の方法

さて、土地の相続税を計算してみると、自分の所有土地の相続税評価額が以外にも高いことに気づかれた方も多いと思います。
このままでは、相続税納税のときに、不動産を売却しないと納税資金が確保できないかもしれません。
そこで多くの地主は、相続税対策を考えます。
相続税対策を行うためには、
①相続税評価額を圧縮する。
②養子縁組などによって基礎控除額を増やすことで課税遺産総額を減額する。
③遺産配分を考えることで税率を変えたり各種控除を効果的に適用させたりする

などの方法があります。
このうち、土地に関する相続税対策の方法は、①相続税評価額を圧縮することです。

なぜアパート・マンション建築が相続税対策になるのか

土地の相続税評価額を圧縮する方法として代表的なものが、更地上にアパート・マンションを建設して、賃貸経営を行うことです。
土地の相続税評価額には、土地の利用状況を評価額に反映させようという趣旨の特例があります。
アパート、マンションを建設し賃貸経営を行うと、その土地は容易には別の用途に利用できません。
そのために、評価の減額が認められているのです。
代表的な評価減の方法として、「貸家建付地の評価減」と「小規模宅地の評価減」を紹介します。

貸家建付地に関する評価減

「貸家建付地」とは、土地上に自己所有の賃貸用の建物が存在する場合の底地のことです。
ちょうど土地上にアパート・マンションの住居系建物や、オフィスビル、商業施設などの賃貸用建物が存在し、その自己所有建物が賃貸されていた場合に適用することができる評価減です。
具体的な減額方法は以下の通りです。

貸家建付地の評価額=(土地の評価額)-(土地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

土地の評価額とは、路線価方式や倍率方式によって算出された評価額です。
借地権割合とは、借地の土地評価のうち、土地利用権たる借地権の評価はどのぐらいかを示すもので、路線価図の右上や倍率表に表示があります。
路線価図の数字の横のアルファベットが借地権割合を示す表示です。
Aならば90%、Bならば80%が借地権の評価であることを示しています。

一般的には繁華街であればあるほど、土地を所有する価値よりも利用する価値の方が高いと考えられているため、借地権割合が高くなっています。
東京都中央区銀座ですと、借地権割合90%のところも多くなってきます。
借家権割合は借家であることをどのように評価するかの基準で、通常0.3の値を用います。
賃貸割合は建物のうちどのぐらいが賃貸に使われているかを示すもので、すべて賃貸していれば100%、半分自宅に使用しているならば50%です。

例として以下の土地を考えてみましょう。

  • 土地の評価額 200,000千円
  • 地積200㎡
  • 借地権割合 60%
  • 借家権割合 30%
  • 賃貸割合 100%

この貸家建付地の評価は以下の通りとなります。
200,000千円-(200,000千円×60%×30%×100%)=164,000千円
したがって、土地の相続税評価が約20%圧縮されたことになります。

小規模宅地の評価減

次に小規模宅地の評価減です。
小さな宅地は利用用途が限られるほか、相続人の住宅として使用している場合には、相続税が支払えなくなって住居を失ってしまうことがないように配慮して設けられた特例です。
小規模宅地の評価減については、いろいろな宅地についての評価減のルールがありますが、アパート・マンション経営による評価減に関係するのは、「貸付事業用宅地等」の評価減です。
この評価減を適用すると、200㎡を限度として50%の割合で評価額が減額されます。
先ほどの例に当てはめると、宅地の面積は200㎡でしたので、100,000千円については評価が減額されます。
注視すべき点は、相続開始前3年以内に貸付けされた土地は除かれること、他の所有土地で小規模宅地の評価減を使っていた場合には、土地の平米数について考慮する必要があることです。

相続税は早めの対応が得策

相続はいつ起こるかわからないものです。
急に大病を患ったり、あるいは認知症の症状に悩まされたりすると、効果的な相続税対策が難しくなってきます。
相続税について不安な方はお早めに顧問税理士や不動産業者等に相談することをお勧めします。


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