アパート経営で税金はいくらかかる?節税対策のポイントを解説
これからアパート経営を始める人に知っておいて欲しいことはたくさんあります。
そのなかでも、税金の知識は必要不可欠です。
利益が出れば必ず納めなくてはいけないものであるうえに、不動産投資の収支にも大きくかかわってきます。
基本的な部分だけでも「いつ、どんな税金が、どれだけかかるのか」「どうすれば節税できるか」は知っておきましょう。
この記事では、アパート経営で課される税金について、計算方法と節税対策を解説します。
アパート経営でかかる税金一覧
アパート経営に関する税金は「不動産の取得時」「毎年かかる税金」「相続時の課税」の3つに分けられます。
アパート経営で毎年かかる税金一覧は以下のとおりです。
土地・建物の購入時に課税 | アパート経営中に課税 |
---|---|
・不動産取得税 ・登録免許税 ・印紙税 | ・所得税 ・住民税 ・消費税 ・個人事業税 ・固定資産税、都市計画税 |
このなかで、アパート経営が事業規模になると課される税金が「消費税」と「個人事業税」です。
消費税は課税対象額が1,000万円を超えなければ課税されません。
固定資産税や所得税・住民税などは節税できることもあります。
納める税金がいくらになるのかシミュレーションしたうえで、税金対策をおこないましょう。
アパート経営の相続税対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:なぜアパートは相続税対策になる?軽減措置やいくらになるのかを解説
アパート購入にかかる3種類の税金
アパート経営は物件を取得するところから始まりますが、その際には不動産取得税、登録免許税、印紙税の3つが課せられます。
どんな税金なのか、どうやって計算するのかについて基本的な部分を解説しましょう。
不動産取得税
不動産取得税とは、アパートを含めた不動産を購入、贈与、建築などで取得した場合にかかる税金です。
ただし、相続した不動産など、一定の場合にはかかりません。
不動産取得税は「取得した不動産の価格(課税標準額)×税率」で求められます。
不動産それぞれの税率は以下のとおりです。
土地 | 3% |
家屋(住宅) | 3% |
家屋(非住宅) | 4% |
なお「取得した不動産の価格」とは、アパートの購入価格ではなく、固定資産課税台帳に登録された価格です。
固定資産課税台帳は、所有する不動産の所在地(例:名古屋市のアパートの場合は名古屋市)の市区町村役場で閲覧できます。
また、毎年4月頃送られてくる固定資産税の課税明細書にも記載されているため、一度確認してみましょう。
登録免許税
アパートなどの不動産を購入した際は、法務局で登記をします。
登記とは、登記簿に土地・建物の所有権を記録・公示する手続きです。
「この不動産のオーナーは私です」と対外的に示す手続きと考えましょう。
そして、登録免許税は、登記をする際に国に納める税金のことです。
基本的に、不動産の固定資産税評価額に税率をかけて金額を計算します。
投資用アパートを取得した場合における土地および住宅の登記にあたっての税率をまとめました。
土地の登記
項目 | 税率 |
---|---|
所有権の保存 | 0.4% |
所有権の移転(売買) | 2.0% |
抵当権の設定 | 0.4% |
建物の登記
項目 | 税率 |
---|---|
所有権の保存 | 0.4% |
所有権の移転(売買) | 2.0% |
抵当権の設定 | 0.4% |
印紙税
不動産を購入する際は不動産会社と売買契約書を取り交わしますが、その際に必要となるのが印紙税です。
収入印紙を売買契約書に貼って納めます。
なお、令和6(2024)年3月31日までは、印紙税の軽減措置が受けられます。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
アパート経営中にかかる5種類の税金
アパート経営が始まってからも、税金は払わなくてはいけません。
おもにアパート経営により得られた収益に対するものと、所有しているアパートそのものに対してかかるものに分かれます。
基本的な部分を解説しましょう。
所得税
所得税とは、会社の給料やアパート経営などで得たお金に対してかかる税金です。
毎年1月1日から12月31日までの1年間で得られた収入から、アパート経営の必要経費などの費用を差し引いた儲け(所得)に対してかかります。
税法上、所得は以下の10種類です。
- 給与所得
- 事業所得
- 利子所得
- 配当所得
- 譲渡所得
- 不動産所得
- 一時所得
- 退職所得
- 山林所得
- 雑所得
アパート経営により得られた儲けは、不動産所得に分類されます。
固定資産税、都市計画税などの税金、減価償却費、管理会社への委託費用、修繕費、広告宣伝費などは経費として収入から差し引けます。
実際に所得税の額を求めるには「速算表」を使いましょう。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97,500円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 427,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,799万9,000円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円~ | 45% | 4,796,000円 |
計算例:課税される所得金額が400万円の場合400万円×20%-457,500円=342,500円
※平成25(2013)年から令和19(2038)年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)をあわせて申告・納付
住民税
住民税とは、行政サービスの対価として地方自治体に支払う税金のことです。
計算の仕方により、以下の2つに分かれます。
- 均等割:一定額以上の所得がある人は全員負担する部分
- 所得割:前の年の所得金額に応じて負担する部分
均等割と所得割を合計した金額を住民税として支払う流れです。
標準税率は以下のようになっています。
項目 | 都道府県 | 市区町村 | 合計 |
---|---|---|---|
所得割 | 4% | 6% | 10% |
所得割(政令指定都市) | 2% | 8% | 10% |
均等割 | 1,500円 | 3,500円 | 5,000円 |
※神奈川県横浜市など、一部の地方自治体では、標準税率に上乗せされて住民税が課されることがあります。
なお、地域によっては住民税が標準税率より高いケースもあり注意が必要です。
たとえば、神奈川県横浜市では、環境保護施策「横浜みどりアップ計画」の財源の一部として「横浜みどり税」の負担が求められます。
このため、市民税均等割の税額が年間で900円高くなっています。
消費税
消費税は、物やサービスを消費した人が負担する税金です。
不動産を取得した場合、建物には消費税がかかりますが、土地にはかかりません。
土地は消費されるものではない、という前提に基づいているためです。
本来、課税売上高が1,000万円を超えない場合は消費税の納付を免除されます。
ただし、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜)が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産(高額特定資産)を仕入れた場合は納税義務が発生するので注意してください。
不動産投資用のアパートも高額な特定資産に該当する可能性があります。
個人事業税
個人事業税は、地方税の一つです。
事業を営むにあたっても公共サービスの恩恵にはあずかりますが、その公共サービスの費用を負担するための税金と考えましょう。
以下の数式をもとに、税額を計算します。
収入金額-必要経費-青色申告特別控除=所得金額所得金額+青色申告特別控除金額-事業主控除額(290万円)=課税所得金額課税所得金額×事業税率(上記)=事業税額 |
なお、個人事業税は以下の3つの条件がすべて当てはまる場合、納めなくてはいけません。
- その地方自治体に事業所や事務所がある
- 所得金額が290万円を超えている
- 法律で定められた70の業種に該当する
税率は、どの業種に属するかによって異なります。
固定資産税・都市計画税
固定資産税とは、土地、家屋、償却資産などの固定資産を所有している人が市町村に支払う税金のことです。
毎年課される税金で、1月1日時点で土地・建物の所有者に対して課されます。
土地、建物が市街化区域内にある場合は都市計画税が上乗せされます。
それぞれの税率は以下が一般的です。
- 固定資産税・・・課税標準×1.4%
- 都市計画税・・・課税標準×0.3%
ただし、全国一律ではなく市区町村によって異なる場合もあります。
なお、住宅用地に関しては、固定資産税と都市計画税の負担を和らげるため、課税標準に関する特例が設けられています。
住宅用地の面積 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
---|---|---|
小規模住宅用地(1戸につき200㎡までの部分) | 固定資産税評価額×1/6 | 固定資産税評価額×1/3 |
一般の住宅用地(1戸にゆき200㎡を超え、住宅の床面積の10倍までの部分) | 固定資産税評価額×1/3 | 固定資産税評価額×2/3 |
その他(住宅の床面積の10倍を超える部分) | 特例なし | 特例なし |
アパート経営の固定資産税について、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:アパート経営の固定資産税を解説|計算方法や減税するための条件は?
アパート経営の税金をシミュレーション
以下の前提条件に基づき、アパート経営で納める税金をシミュレーションしてみましょう。
- 土地評価額:3,000万円
- 建物評価額:4,000万円
- 小規模住宅用地の軽減措置の適応を受けられる新築物件
- 敷地面積:350㎡
- 年間家賃収入:760万円
- 経費(減価償却費含む):610万円
- 所得税の基礎控除:48万円
- 青色申告の届出をしているものとする
- 国民年金の年間支払額:199,080円(月額16,590円)
- 国民健康保険の年間支払額:94,800円
- 住民税の均等割額:5,000円
固定資産税
固定資産税については、土地と建物に分けて計算します。
税率は1.4%としましょう。
<土地の固定資産税> 200㎡までの部分:3,000万円×1/6×1.4%=7万円 201㎡~350㎡までの部分:3,000万円×1/3×1.4%=14万円合計:21万円 <建物の固定資産税> 4,000万円×1.4%=56万円 |
都市計画税
都市計画税の金額も、土地と建物に分けて計算します。
税率は0.3%としましょう。
<土地の都市計画税> 200㎡までの部分:3,000万円×1/3×0.3%=3万円 201㎡~350㎡までの部分:3,000万円×2/3×0.3%=6万円合計:9万円 <建物の都市計画税> 4,000万円×0.3%=56万円 |
所得税
年間家賃収入から経費(減価償却費を含む)、青色申告特別控除を差し引いた額を所得とし、計算します。
<所得> 760万円-610万円-65万円(青色申告特別控除)=85万円 <課税所得> 85万円-48万円(基礎控除)-199,080円(国民年金)-94,800円(国民健康保険)=76,120円→1,000円未満は切り捨てるため76,000円 <所得税> 76,000円×5%=3,800円 |
住民税
年間家賃収入から経費(減価償却費を含む)、基礎控除、青色申告特別控除を差し引いた額を課税所得とし、計算します。
<所得> 760万円-610万円-65万円(青色申告特別控除)=85万円 <課税所得> 85万円-43万円(基礎控除)-199,080円(国民年金)-94,800円(国民健康保険)=126,120円→1,000円未満は切り捨てるため126,000円 <住民税> 126,000円×10%+5,000円 =17,600円 |
年間にかかる税金の合計金額
ここまでの結果を踏まえ、年間でかかる税金の合計金額をまとめました。
- 土地の固定資産税:21万円
- 建物の固定資産税:56万円
- 土地の都市計画税:9万円
- 建物の都市計画税:56万円
- 所得税:3,600円
- 住民税:17,600円
- 合計:93万7,200円
やはり、土地と建物にかかる税金のウェイトが大きいことがわかるでしょう。
アパート経営でできる節税対策
税金の額が大きくなると、手元に残せる現金は減ってしまいます。
なるべく節税をして、税金の額を減らす工夫をしましょう。
そこで、アパート経営においてぜひ取り入れて欲しい、無理なくできる税金対策を紹介します。
経費計上による節税効果
科目 | 内容 |
---|---|
租税公課 | 固定資産税、都市計画税 |
損害保険料 | 火災保険料、地震保険料 |
修繕費 | 設備の修理・交換、リフォーム費用 |
減価償却費 | 建物、設備、構築物 |
借入金利子 | 借入金がある場合の利子分 |
管理費 | 管理委託費用、サブリース費用 |
旅費交通費 | 経営しているアパートの清掃や立会いに行ったときの交通費 |
水道光熱費 | 共用部分の電気代・水道代 |
振込手数料 | 家賃入金時、費用支払い時の振込手数料 |
通信費 | 携帯電話代、プロバイダ代 |
事務用品費 | 封筒などの文房具代 |
新聞図書費 | 情報収集のための新聞、書籍代 |
諸会費 | アパート経営や不動産投資に関するセミナーの参加費 |
接待交際費 | アパート経営、不動産投資に関する異業種交流会への参加費 |
一方、アパート経営に関する費用であっても、以下のものは経費として計上できないため注意してください。
- 物件の購入代金
- (不動産購入の際の)仲介手数料
- 団体信用生命保険特約料
- 固定資産税清算金
関連記事:アパート経営の経費まとめ|どこまでが必要経費として落とせる?
修繕費の費用計上による節税効果
アパート経営において重要になる費用の一つが、修繕費です。
実際は修繕積立金として定期的に一定額を積み立て、そこから修繕費を出す形を取っていることが多いでしょう。
本来、修繕積立金は「実際に修繕をした時点」で経費計上しなくてはいけません。
しかし、以下の4つの条件を満たせば、積み立てた年の経費にできます。
- 区分所有者に支払義務がある
- 管理組合に返還義務がない
- 積立金の使い道が限定されている
- 積立金の算出方法が合理的である
参考:国税庁「賃貸の用に供するマンションの修繕積立金の取扱い」
減価償却による節税効果
減価償却とは、固定資産の取得に要した支出を、その資産を使える期間にわたって費用配分する手続きを指します。
アパートなど、不動産の取得に要した支出も、減価償却費として費用配分が可能です。
つまり、減価償却をおこなえば、費用が増えて、結果として収益=所得が減ります。
所得が減れば所得税や住民税も減るため、税金対策として活用できると考えましょう。
なお、アパートの耐用年数は構造によって異なるため、以下の表も参考にしてください。
構造 | 事業用 | 自己居住用 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 33年 |
鉄骨造 | 19~34年(鉄骨の厚みによる) | 28~51年(鉄骨の厚みによる) |
RC造 | 47年 | 70年 |
青色申告による節税効果
個人事業主の確定申告に関しては、青色申告と白色申告の2つが設けられています。
そして、税制上の優遇措置が大きいという意味では、できるかぎり青色申告を選びましょう。
違いを表にまとめました。
項目 | 白色申告 | 青色申告 | |
---|---|---|---|
届出の必要 | なし | あり※その年の3月15日(1月16日以降の場合は2ヶ月以内に「青色申告承認書」を提出) | |
控除 | なし | 10万円 | 65万円 |
帳簿付け | 単式簿記 | 単式簿記 | 複式簿記 |
決算書の作成 | 収支内訳書 | 貸借対照表損益計算書※一部未記入可 | 貸借対照表損益計算書※全部記入 |
専従者 | 配偶者は86万円まで、それ以外は50万円まで | 家族への給与を経費とすることが可能。妥当であれば金額の制限なし |
とくに、帳簿を複式簿記でつけ、決算書をすべて記入すれば、65万円の控除を受けられます。
市販の会計ソフトを使えば簡単に条件は満たせるため、ぜひ取り組んでみましょう。
損益通算による節税効果
万が一、アパート経営で赤字が出てしまったら、損益通算をしましょう。
損益通算とは、赤字の所得をその他の所得の黒字と相殺する計算方法のことです。
確定申告を白色申告、青色申告のどちらでおこなっているかは問われません。
赤字が大きく、損益通算しきれない場合は、翌年以降3年間にわたり繰越控除ができます。
つまり、利益と相殺できる期間が長くなるため、その間は税金を抑えられます。
小規模企業共済への加入による節税効果
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者・役員が、廃業・退職時の生活資金に充てるために積み立てる制度のことです。
毎月の掛金は、毎月1,000円〜7万円の範囲で自由に設定できます。
そして、掛金は全額所得から控除可能です。
つまり、その分収益=所得が少なくなるため、結果として節税につながります。
いつかアパート経営をやめることになった場合に備え、必要な生活費も積み立てられることは大きなメリットでしょう。
法人化による節税効果
法人化とは会社を作り、自分が代表取締役になることです。
所得税の税率より法人税の税率のほうが安くなるタイミングを見計らって法人化に踏み切ると、大幅に節税できます。
一つの目安になるのが、所得が700万円前後です。
イメージとしては、毎月の粗利が60万円前後になったタイミングを考えましょう。
この場合、所得税の税率は23%ですが、法人税の税率は15%になります。
実際に法人化したほうがよいのかなど、細かい点については税理士に相談しましょう。
関連記事:アパート経営の法人化のメリット・デメリット|法人化する方法を解説
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まとめ
アパート経営をおこなううえで、考えておきたいのが税金対策です。
せっかくのアパート経営を始めても、対策を講じていないと多額の税金で収益が少なくなることもあります。
納める税金がいくらになるのか、シミュレーションしておくことが大切です。
また、情報が不足してしまわないように、専門家への相談も忘れずにおこないましょう。
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