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アパート経営を法人化するタイミングは?メリット・デメリットを解説

アパート経営の法人化には、所得税や相続税などの節税効果が期待できます。
ただし、会社設立には手続きの手間がかかり、設立後にはランニングコストも必要です。
投資規模や収益の状況によっては、かえって損をする可能性もあります。
個人と法人では何が違うのか、メリット・デメリットを把握したうえで法人化を検討しましょう。

この記事では、アパート経営を法人化するメリット・デメリットや法人化の流れを詳しく解説します。

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    アパート経営の法人化とは?

    個人でアパートを経営する場合、所有する物件は自分名義です。
    アパート経営で法人化した場合は、会社として物件を運用するため会社名義で所有します。
    つまり、新たに設立した法人にアパートを所有させ、会社としてアパート経営することです。

    法人と個人事業主の違い

    アパート経営の法人化と個人事業主の違いは以下のとおりです。

    個人事業主法人化
    アパートの所有者個人の持ち物会社の持ち物
    入居者が契約する相手個人と契約会社と契約
    金融機関からの融資個人が申し込んで借りる会社が申し込んで借りる
    アパートの収入個人に直接入る会社に入る

    アパート経営を法人化すると、個人経営時とは異なり、家賃収入をすべて自分のものにできません。
    法人によるアパート経営の収益は、会社からの役員報酬として受け取ります。

    節税対策として家族を役員にした場合は、収入を自分以外に分散できます。

    アパート経営を法人化する目安やタイミングは?

    個人事業主から法人化する目安は、所得が1,000万円を超えたタイミングです。
    不動産所得だけでなく、サラリーマンとしての給与所得など、ほかの所得との合計でも構いません。

    法人に課される税金(法人税、地方税など)は、資本金1億円以下の会社で合計35%程度です。
    個人の場合は収入が高いほど税率も高くなりますが、課税所得900万円以上になるまでは33%以下のため、法人化するより個人経営のほうが有利です。

    課税所得が900万円以上になると、所得税・住民税が43%となり法人化が節税につながります。
    ただし、会社の設立費用や運営費がかかることも考慮し、所得1,000万円以上を目安とするのがよいでしょう。

    また、事業規模の観点からでは、アパートの部屋数が10部屋以上の場合に法人化を検討するのが一般的です。

    アパート経営の法人化のメリット|節税対策できる

    アパート経営を法人化すると、個人経営よりも有利な税率や赤字の繰越期間などにより節税効果が期待できます。

    所得税の税率が低い

    所得税は収入が高くなるほど税率が高くなるよう設定されています。
    以下の表に示したとおり、課税所得額が4,000万円以上になると、住民税も含めて55%も課税されます。

    課税される所得金額税率控除額住民税
    1,000円から194万9,000円まで5%0円10%
    195万円から329万9,000円まで10%9万7,500円
    330万円から694万9,000円まで20%42万7,500円
    695万円から899万9,000円まで23%63万6,000円
    900万円から1,799万9,000円まで33%153万6,000円
    1,800万円から3,999万9,000円まで40%279万6,000円
    4,000万円以上45%479万6,000円

    しかし、アパート経営を法人化した場合、法人として課税されるのは35%程度です。
    アパート経営で得られる不動産所得が高くなるほど、法人化による節税効果は高まります。

    出典:国税庁「所得税の税率

    役員報酬を経費にできる

    役員報酬は会社の経費として扱えるため、法人としての所得を削減できます。
    法人税は法人の所得に対して課されるため、家賃収入の分配は法人税の節約にもつながります。

    ただし、家族でも未成年や学生など、労務実態がない場合は役員報酬としての給与が認められない場合があり注意が必要です。

    役員報酬のほかにも、法人のほうが経費として扱える幅が広がるため、個人経営よりも節税はおこないやすいといえます。

    赤字の繰越期間が個人よりも長い

    個人・法人に関わらず、事業が赤字になった場合は翌年以降の黒字と相殺が可能です。
    ただし、相殺しきれなかった分を翌年以降の黒字と相殺できる「繰越期間」の長さが違います。

    個人経営では3年間、法人なら10年間まで繰越期間が設けられており、法人化により大幅に繰越期間が延長できます。
    アパート経営は修繕などで赤字になることも多く、法人化することで赤字を活かした節税効果が期待できます。

    アパート経営の法人化のメリット|相続・贈与時に有利

    アパート経営を法人化すると、相続税や贈与税の削減だけでなく、スムーズな事業承継にもつながります。

    相続税対策になる

    個人経営の場合、収益から得られる所得は個人の財産として蓄積され、相続税も増大していきます。
    しかし、アパート経営を法人化すれば、家族を役員にして家賃収入を役員報酬として分散できるため相続税の削減につながります。

    また、株式会社でアパート保有から3年を超えた場合、適用される相続税評価額は個人と同じです。
    その結果アパートの資産評価が時価より大幅に抑えられ、節税効果が得られます。

    家賃収入の分配に贈与税がかからない

    アパート経営を法人化して、家賃収入を家族に役員報酬として分配すれば贈与税がかかりません。
    個人経営の場合は、年間110万円を超える贈与があった場合、お金を受け取った側に贈与税が発生します。
    役員報酬なら贈与に該当しないため、非課税枠を気にせず親族への生前贈与が可能です。

    相続時に遺産分与しやすい

    相続人が複数名いる場合、個人経営ではアパートを誰が相続するかでもめるケースがあります。
    しかし、アパート経営を法人化していれば、不動産を株式として分割相続ができます。
    前もって株主に相続人を指名しておけば、相続時の手続きも不要です。

    また、法人として入居者との契約を結んでいれば、相続時に名義変更のため契約し直す必要もなく、スムーズな経営の引き継ぎができます。

    アパート経営の法人化のデメリット・注意点

    アパート経営を法人化するには、会社設立費用や運営費用がかかります。
    デメリットも踏まえて会社設立を検討することが大切です。

    会社設立時に費用がかかる

    アパート経営の会社設立時には、登録免許税や定款の収入印紙代や認証手数料などがかかります。
    ただし、法人の種類によって費用の金額は異なり、株式会社よりも合同会社のほうが出費を抑えられます。
    合同会社とは、経営者と出資者が同じ会社のことです。

    合同会社では定款の認証が不要で、登録免許税の最低金額が株式会社の半額以下で済みます。
    法人化によるメリットは株式会社と合同会社で変わらないため、特別な理由がなければ合同会社での法人化がよいでしょう。

    株式会社を設立する費用

    アパート経営を株式会社で法人化する場合、以下の費用がかかります。

    法定費用
    (24万2,000円)
    登録免許税15万円(資本金の0.7%と比べて高いほう)
    定款用の収入印紙代4万円(電子定款なら不要)
    定款の認証手数料5万円
    定款の謄本手数料2,000円
    その他の費用
    (1万円程度)
    実印作成代5,000円~
    印鑑証明取得費約300円 × 必要枚数
    登記簿謄本発行費約500円 × 必要枚数
    資本金1円以上あればOK
    費用の合計約25万円

    定款とは、会社の根幹となる目的・組織・活動に関する基本ルールをまとめたものです。
    紙でなくPDFファイル形式で作成すれば印紙税はかかりません。
    専門的な部分を専門家に依頼した場合は、別途5万円以上の手数料がかかります。

    電子定款を選択し、できるだけ自分で手続きをおこなえば設立費用を抑えることも可能です。
    しかし、専門家に依頼すれば、会社設立にかかる手間を省いて時間を節約でき、会社設立の注意点などもアドバイスしてもらえます。
    信頼できるパートナーとして関係を築くためにも、専門家へ依頼するのがよいでしょう。

    合同会社を設立する費用

    アパート経営を合同会社で法人化する場合、以下の費用がかかります。

    法定費用
    (10万円)
    登録免許税6万円(資本金の0.7%と比べて高いほう)
    定款用の収入印紙代4万円(電子定款なら不要)
    定款の認証手数料0円
    定款の謄本手数料0円
    その他の費用
    (1万円程度)
    実印作成代5,000円~
    印鑑証明取得費約300円 × 必要枚数
    登記簿謄本発行費約500円 × 必要枚数
    資本金1円以上あればOK
    費用の合計約11万円

    合同会社では定款の認証が不要な分、設立費用が抑えられます。
    専門家に依頼を考える場合は、株式会社と同様に別途手数料として5万円前後が必要です。

    合同会社の出資比率には決まりがなく、複数名で出資する場合はトラブルになる可能性もあります。
    認識にずれが生じないよう、しっかりとすり合わせをおこないましょう。

    法人化してからの運営費用は個人経営よりもかかる

    会社を維持するためには、以下のような費用がかかります。

    各種保険料社員にした家族などの雇用保険や健康保険、年金などにかかる費用
    法人住民税会社としての住民税。均等割は赤字でも課税されます。
    専門家への報酬弁護士や税理士などに対する手数料や報酬
    外注・雇用にかかる費用人を雇用もしくは外注により、経理・財務・人事などに関わる事務作業を処理する場合の費用。
    事務所費用オフィスの賃料や光熱費、通信費など

    法人化すると帳簿の作成難易度が高くなるため、確定申告を税理士に依頼するのが一般的です。
    費用の相場は、確定申告の依頼料は10〜30万円、顧問契約を結ぶ場合は月額3万円程度です。

    手続きに手間がかかる

    アパート経営の法人化には、実印の作成や各種書類の準備、市町村や税務署への届けの提出など、多くの手間がかかります。

    また、会社設立後は医療保険や公的年金、雇用保険などの手続きにも対応します。
    これまで会社員だった場合は、会社運営に必要な手続きの多さに驚くかもしれません。
    さらに、どれだけ規模が小さくても法人は厳密な会計処理が求められるため、事務的な負担も増加します。

    規模が小さいと損をする恐れがある

    アパート経営を法人化する場合、会社設立時だけでなく会社運営にもランニングコストがかかります。
    アパート経営の規模が小さい場合は、利益よりも費用負担が大きくなる可能性があります。
    法人化の目安は個人の所得が1,000万円を超えるケースです。
    本当に節税になるのか、費用倒れにならないか、細かくシミュレーションして慎重に検討しましょう。

    アパート経営を法人化する方法・流れ

    アパート経営を法人化する手続きは、司法書士などの専門家を頼るとスムーズです。
    もちろん、各所に問い合わせながら自分でおこなうこともできます。

    法人の種類を決定する

    法人には多くの種類がありますが、アパート経営を法人化する場合は株式会社か合同会社を選択するのが一般的です。
    株式会社は社会的信用が高い反面、設立費用は合同会社の2倍はかかります。

    アパート経営で得られるメリットは変わらないため、基本的には費用を抑えられる合同会社での設立がよいでしょう。
    もちろん、相続対策などでは株式会社のほうがよい場合もあります。
    目的を明確にして検討することが大切です。

    法人の定款を作成する

    定款とは会社の基本的な情報や事業目的などをまとめたルールブックのことで、「会社の憲法」とも呼ばれています。
    定款のひな型は公証役場やインターネット上でも確認できます。
    収入印紙代を節約するなら、PDFファイル形式で申請する電子定款を選びましょう。

    また、金融機関との取引や補助金の申請などで「定款の写し」が必要な場合があるため、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。

    法人の登記書類を準備する

    法人の登記には以下の書類が必要です。

    書類備考
    払込証明書資本金が正しく振り込まれていることを証明する書類です。資本金は定款認証完了日以降に、定款に記載された金額と同額を振り込みましょう。
    代表社員の印鑑証明役所で登録したのち、役所窓口やコンビニで取得可能になります。
    印鑑届出書会社の実印登録に必要な書類です。代表社員の印鑑証明とは別に必ず用意しましょう。
    登記申請書会社の基本情報などを記載する書類です。書式が決まっているため、法務局のHPからひな形をダウンロードします。
    登記用紙と同一の用紙登記すべき事項を記載した書類です。登記簿謄本に記載されるため一字一句間違えないよう気を付けてください。法務省や法務局HPに、法人ごとのひな形があります。
    収入印紙登録免許税を納めるための収入印紙です。郵便局や法務局で購入します。
    定款会社保管用と提出用に、定款(認証済み)を計2部用意しましょう。

    司法書士などに作成を依頼すれば安心ですが、法務局に問い合わせながら自分で作成することも可能です。

    参考:法務省「登記事項の作成例一覧

    法務局で設立登記をおこなう

    会社設立の登記申請は、設立する会社の所在地を管轄する法務局でおこないます。
    一人会社や電子定款の場合は、オンライン申請が便利です。
    ただし、不備などがあると対応に時間がかかります。
    窓口申請であれば、相談しながら手続きを進められるためスムーズです。

    原則として、資本金の払込みから2週間以内に申請します。
    問題がなければ連絡がくることはなく、登記申請した日を会社設立日として問題ありません。

    税務署に法人の開業届を提出する

    設立から2ヶ月以内に開業届を提出します。
    株式会社の場合は株主名簿の写しも必要になるなど、法人の種類などによって必要書類が変わる場合があります。
    提出前に税務署に確認しましょう。
    基本的には以下の書類が必要です。

    • 法人設立届出書
    • 定款の写し
    • 源泉所得税関係の届出書
    • 登記簿謄本
    • 会社設立時の貸借対照表
    • 出資者の氏名と出資金額が確認できる書類

    アパート経営の法人化以外で節税する方法は?

    節税に効果的な方法は、アパート経営の法人化だけではありません。
    以下のポイントを押さえて、経費について見直してみましょう。

    減価償却費を最大限活用する

    アパートの購入費は、建物の耐用年数にあわせて減価償却が可能です。
    購入した翌年以降も経費計上でき、損益通算をおこなえば会社員としての所得とアパート経営の赤字の相殺につながります。
    所得額を圧縮することで所得税・住民税の節税効果が得られることもメリットです。
    ただし、ローンの元金返済額が減価償却費を上回るデッドクロス状態になる恐れがあり、売却タイミングなどの慎重な検討が必要です。

    小規模企業共済に加入する

    小規模企業共済制度とは、小規模企業の経営者や個人事業主などのための、積み立てによる退職金制度です。
    月々1,000円〜7万円の間で掛金を設定し、確定申告の際には掛金全額を課税対象所得から控除できます。
    課税対象額を削減できるため所得税や住民税の節税につながります。
    また、共済金はアパート経営の廃業時に受け取れるため無駄になりません。

    修繕費用を適切に経費計上する

    アパート経営では、建物の修繕費を経費として計上できます。
    たとえば、古くなった共用部の改修や外壁の塗装などが挙げられます。
    とくに収益が急激に上がった際などには、アパートのメンテナンスにより年収を調整することで節税につなげられます。

    ただし、通常の維持管理を超える大規模工事は、修繕費ではなく「資本的支出」とみなされ減価償却が必要になるため注意しましょう。

    アパート経営の法人化に関してよくある質問

    アパート経営を法人化する前には、できるだけ疑問を解消しておきましょう。
    ここでは、よくある質問にお答えします。

    個人事業主と法人にかかる税金の違いは?

    個人事業主と法人に課される税金は、おもに以下のとおりです。

    個人事業主法人
    所得税法人税
    消費税消費税
    特別復興所得税法人特別所得税
    個人住民税法人住民税
    個人事業税法人事業税
    地方消費税地方消費税

    法人に課される税金は、代表者や経営者などではなく「法人」そのものに課税されます。
    それぞれ名前は似ていますが、税率や算出方法が異なります。

    サラリーマン大家でもアパート経営の法人化は問題ない?

    サラリーマンとして会社に勤める人は、アパート経営の法人化を考える際に、勤め先の就業規則で副業に関する内容を確認しましょう。
    アパート経営は不動産投資として扱われるのが一般的ですが、法人化するほど事業規模が大きくなれば、投資ではなく副業とみなされる可能性があります。

    勤め先によって副業の可否や認められる範囲は異なります。
    とくに、公務員の場合は規定が厳しい傾向にあるため必ず確認しましょう。

    下記関連記事では、公務員で不動産経営を考えている人に副業をするときの注意点について詳しく解説しています。

    関連記事:公務員で不動産経営がバレたらクビ?副業をするときの注意点とは

    アパート経営の法人化に必要な資格はある?

    個人・法人を問わず、アパート経営に資格は不要です。
    アパート経営の法人化に必要な資格もありません。
    ただし、アパート経営を成功させるためには、経営状況や対策などを的確に判断するための知識が必要です。

    資格の勉強は、アパート経営に役立つ知識を身につける有効な手段の一つです。
    以下の資格を参考にしてみてください。

    • 宅地建物取引士
    • 賃貸不動産経営管理士
    • ファイナンシャルプランナー
    • 土地活用プランナー
    • マンション管理士
    • 不動産実務検定
    • 管理業務主任者
    • 住宅診断士

    まとめ

    アパート経営の法人化は節税対策として有効です。
    しかし、所得額や事業規模によっては損をする場合もあります。
    会社の設立だけでなく運営にもコストがかかるため、会社設立によりどのような変化があるか把握したうえで法人化を検討しましょう。

    中山不動産ではアパート経営に関するセミナーや相談会を実施しています。
    アパート経営の法人化に限らず「これってどうなんだろう?」という小さな疑問にもお答えいたします。
    ぜひお気軽にお問い合わせください。

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